難関中学に合格する子どもはどんな勉強をしているのか。妻と8人の子どもの10人暮らしである会社員のオトクサさんの家庭では、日常生活の中で自然と学びの機会を作っていたという。著書『通塾なしで開成合格!中学受験おうち勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、一部を紹介する――。(第1回/全2回)

■父も「塾なし」で国立大学に合格

ネットで「オトクサ」と検索すると「何者」と出てきます。皆さんも私のことを「何者?」と思っているかもしれませんね。子どもの中学受験について語る前に、まずは自己紹介から始めたいと思います。

私、オトクサも中学受験の経験者です。進学先は面倒見のいい学校であったこと、先生を信頼していたこともあり、大学受験では、先生から推奨された問題集と赤本中心の「塾なし」受験で、無事大阪大学に合格することができました。

大学時代は、自分が中学受験時代に通っていた塾(浜学園)のライバル塾(希学園)でアルバイトをしました。

こう書くと「なんだお前、“塾なし”ってのはつまり、自分が塾でバリバリ教えてたから子どもにも教えられたのか」と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。テストや自習室の監督が中心の業務でした。とはいえ、受験生でも保護者でもない立場で中学受験の世界を見た経験が役立ったのは間違いありません。

■7人のきょうだいに囲まれながら中学受験

今は普通の会社員です。どうやら、子ども8人=金持ち、塾なし勉強=時間の融通がきく自営業、と連想する方が多いようで「オトクサ 職業」もなぜか検索されています。

在宅勤務の日もありますが、基本的には通常の会社勤めをしており、「子どもの勉強が何より優先」という考えは持っていません。むしろ、飲み会と麻雀と競馬が趣味で、その隙間に勉強を見ることがあるという、受験生保護者としては「ダメな部類」の父親なのだと自覚しています。

そんな父親が、なぜ「通塾なし」という選択をしたのか。その理由と実践方法についてお話ししていきます。

中学受験をする小学6年生にとって、夏休みは天王山と言われるくらい大事な時期です。秋以降は過去問演習が中心となるため、まとまった時間が確保できる夏休みが、単元別の総復習・苦手克服の最後のチャンスとなるためです。

しかしオトクサ家の場合、この大事な時期になんと8人目となる赤ちゃんが生まれました。一番上と一番下が女の子、間の6人が男の子という大家族の中で、長男は受験勉強に取り組むことになったのです。

■「受験生優先」から程遠い家庭環境

世の中のご家庭では、中学受験生が最優先されることも多いでしょう。しかし、オトクサ家では常に赤ちゃんやちびっ子たちが優先される環境でした。

「ごめん、オムツ替えといて!」と勉強中に頼まれることも珍しくありません。祖父母も遠方に住んでいるため、私と妻の2人で家事や育児をこなしながら、受験勉強のサポートをする必要がありました。

長男が受験をする小学6年生の頃は0歳、2歳、4歳、6歳、8歳、9歳の妹と弟がいました(年上は2歳上の長女だけ)。ちびっこがいると毎日がにぎやかで楽しいんですが、中学受験に取り組む環境としてはとても大変です。

当時の家庭環境を具体的にお伝えするとこんな感じです。

● 本棚や問題集が日々グチャグチャに(棚に戻してもすぐ床に落とされる)
● 勉強中でも部屋にちびっこたちが気にせず入ってくる(バタバタ走り回る)
● きょうだいの騒ぐ声が絶えない(時には喧嘩も)
● ノートは破られ、消しゴムは割られる(消しゴムは一カ月に50個買っていたことも)

制御不能な様子をご想像いただけますでしょうか。つまり、親が寄り添って勉強を見る、プリントを整理するといった「一般的な受験生活」は、最初から難しい状況だったのです。

■弟たちにイライラしつつ、癒される日々

そんな環境でも、長男は小学5年生の年末頃まではリビングで勉強していました。家族10人が座るリビングテーブルなので、今皆さんが考えているサイズの一回り大きいテーブルを想像してもらったほうがいいかもしれません。

家族10人が座れる大きなテーブルで、毎晩18時には全員で夕食を取ります。これは私が大切にしている家族の習慣で、通塾しないからこそできた日課でした。

6年生になってからは、過去問やテスト演習のため、リビングを卒業し、子ども部屋での勉強に切り替えました。リビングの騒がしさは相変わらずでしたが、休日は弟たちを公園に連れ出すなど、できる範囲でサポートを心がけました。

自分は必死に勉強しているのに、毎日騒ぐ弟たちを見てイライラする長男の姿も見られました。しかし同時に、休憩時には弟たちと楽しくゲームをしたり、階段を駆け下りて赤ちゃんのぷにぷにした頬を触って癒されたりする姿も見られました。結果的に、きょうだいの存在が長男の大切な気分転換になっていたように思います。

■知育グッズや図鑑で学力が伸びる?

長男が開成中学校に合格した後、よく聞かれる質問があります。

「小さい頃、知育遊びはしていましたか?」
「どんな本を読み聞かせていましたか?」



答えは「何もしていない」です。図鑑すら置いていないリビングに、知育グッズの代わりにあったのはゲームでした。

長男が最初に手にした本は、ゲームの攻略本でした。ひらがなも読めない3歳の頃、本屋で見つけた「NewスーパーマリオブラザースU」の攻略本を手放さなかったのです。そのくらいゲーム好きだった長男は、受験直前までゲームをやめることはありませんでした。弟たちも2歳からゲーム遊びをしています。

知育グッズや図鑑は「理想的」と言われます。実際、知育教育に熱心な家庭の子どもの方が成績が良いと言われているのかもしれません。しかし、それは知育教育そのものの効果なのでしょうか。教育への意識が高く、経済的にも余裕があり、その後の教育環境も充実している――そうした家庭環境の総合的な結果ではないでしょうか。

■「ゲーム禁止」と言わなかった効果

実はわが家も知育グッズを買ったことがあります。しかし子どもたちはまったく興味を示さず、遊ばせようと必死に促したこともありました。

一方で、子どもたちは自然とゲームに親しんでいきました。それはもしかしたら、こんな効果があったのかもしれません。

● 妖怪ウォッチロールプレイング):ひらがなの暗記、戦略的思考の習慣化
 人生ゲーム(すごろく・ボードゲーム):ライフイベントに関する言葉の理解
 マインクラフトブロックの世界):立体図形への親近感、空間把握力の向上

もちろん、ゲームがすべてを解決するわけではありません。

大切なのは、子どもが自ら興味を持ったことを否定せず、むしろ「すごいね!」と共に喜ぶこと。もちろんそれが知育グッズでもいいのです。わが家の場合は、結果的にゲームが知育グッズ以上に子どもの成長を後押ししたのかもしれません。

長男が小学校に進級しても、計算ドリルを買い与えることはありませんでした。その代わり、日常生活の中で自然と学びの機会を作っていました。

■恒例の切符を使った「計算ゲーム」

たとえば土日、競馬が趣味のオトクサは、子どもたちを連れて電車に乗って競馬場へ向かいます。

「よーい、ドン!」

駅の改札を抜けると切符を持つ小学生は「足し算の勝負」がスタートします。切符の番号を使った計算ゲームが、いつの間にか恒例になっていました。

やり方はこうです。

まずは各数字で1桁の足し算(190円なら1+9+0=10)をします。切符を買った日時、整理番号、金額と、実は20個くらいの数字の足し算ができるのです。

次に整理番号4つの数字で、四則計算を駆使して1から順番に答えを作ります。

たとえば、【3625】という数字の時は以下のような計算式です。

1=2×5-3-6
2=3+6-2-5
3=3×5-2×6
4=6×2-3-5
5=5×6÷3÷2

オトクサ家は車を持っていないため、必然的にこうした電車での移動時間が学びの場になりました。相手に負けたくないから、延々と四則計算をするということになります。

■小学生から二乗や素数を教える理由

お風呂でも数字ゲームの時間です。わが家の場合は、長女・長男は1人ずつ、次男・三男・四男が一緒、五男・六男・次女が一緒、といったグループ行動が多く、私は小学生チームと一緒にお風呂に入ることが多いです。

「10秒数えたらあがっていいよー!」
「い〜ち、に〜い、さ〜んっ」

オトクサ家ではこんな数え方は禁止です。代わりにこんなルールで数えます。

● 倍々ルール:1・2・4・8・16・32……
● 二乗ルール:1・4・9・16・25・36……
● 素数ルール:2・3・5・7・11・13……

九九を学習するのは小学2年生かもしれませんが、「まだ習ってないからわからない」なんて言い訳はなしです。1年生でも、×3はできなくても倍にすることはできます。ひっ算はできなくても、頭の中のイメージで、数を倍にすることはできました。

二乗や素数も小学生になったら教えてしまいます。お風呂での計算ゲームに参加するためです。お風呂での計算ゲームに参加するために、リビングで算数を教える……という順番がひっくり返ったようなこともやりました。とにかく、風呂に入るといつの間にか計算をさせられ、いつの間にか夢中になってしまうのです。

■何気ない日常の中で学びの基礎を作る

1人でやるより、きょうだいで交互に言うほうがゲームっぽくなり、あきらめずに考える傾向があります。ただやりすぎると、「うぜっ、だからオトクサとお風呂はいるのイヤなんだよ」と言われてしまうので、さじ加減が必要です。

また、子ども連れで競馬場に行くことについて少し補足すると、JRA競馬場は、子どもの遊び場が充実した家族向け施設もあります。遊び場と馬券売り場はしっかり分かれており、警備員が巡回しています。ゴーカートや乗馬、噴水遊び、時にはヒーローショーも開催されます。本当におすすめなので、ぜひ一度遊びに行ってください。特にお花見の季節は最高ですよ。

「よし! 12.3倍に400円賭けてたぞ!」
「馬連で4頭ボックスだと何通りだ?」
「1000メートルの通過タイム57.9秒⁉」

もしかしたら、競馬場でのこんな会話も計算力アップにつながっていたかも……?

理科や社会では好奇心をくすぐる実験や体験が役立つと言われていますが、わざわざ機会をつくって行うと、「さぁ学ぶぞ」と無意識に構えてしまい、親子とも負担になってしまう可能性があります。

窓の水滴や鍋から出る湯気に注目してみたり、食事の時に食材の産地の話をしたり、こうした日常の中での遊びや会話で「なんで?」「どう思う?」と投げかけていたことが、知らず知らずのうちに学びの基礎を作っていったように思います。

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オトクサ(オトクサ)
会社員
1981年大阪府大阪市出身。小学生の時、自ら志願し中学受験に挑戦し、私立の中高一貫校である清風中学校へ進学。中学・高校は塾に通わずに大阪大学に現役合格。現在、妻と8人の子どもとともに東京で暮らしている会社員。長男が塾なしで中学受験に挑戦する様子を描いたブログ「オトクサのほったらかし受験」では、子どもたちが自ら学び進めるための取り組みや、大家族ならではの日常を発信している。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toru Kimura


(出典 news.nicovideo.jp)

中学受験(ちゅうがくじゅけん)とは、中学校の入学試験を受験することである。この試験を中学入試(ちゅうがくにゅうし)、略すと中受(ちゅうじゅ)という。 日本においては、戦前の旧制中学校は、優秀な男子のみが進学する道であった。戦後の新制中学校は義務教育となり、中学
55キロバイト (8,585 語) - 2025年2月25日 (火) 18:53
子どもが楽しく遊びながら学べる方法があるとは、目から鱗でした!塾に通うのが全てではないことを教えてくれるこのブログ記事は、教育に新たな視点を与えてくれるでしょう。特に無料のゲームを使った学びのアプローチは、これからの教育の形を変えるかもしれません。