■ともかく性格がわるい人
30代会社員の方からのご相談です――当社にも、日頃から言動に(パワハラを含む)問題のある社員がいます。パワハラのひどい人には「パワハラ以外の非常識な振る舞い」も目立ち、「その言動はパワハラにあたる」といった説明をしても、不適切な行いはなくなりません。どうするのが効果的なのでしょうか。
相談者の方のお話はよく理解できます。パワハラ行為者には、何のクセもない人にパワハラ癖だけがくっついているケースは少なく、いくつものクセを持ち、周囲から「ともかく性格がわるい」と思われている人が多いからです(少なくとも私がカウンセリングをしてきた人たちはそうです)。
英語ではラック・オブ・キャラクター(Lack of Character)という表現があります。
「良識が欠如している」(=道徳的でなかったり、不誠実だったり、品性や人に対する思いやりに欠ける)という意味を表します。
パワハラの行為者には、こうした性質の人、あるいはスイッチが入るとその状態になる人が多く、同時に他人の不幸を喜ぶタイプの人が多いのです。
■人を貶めて喜びを感じる人たち
彼らは人を貶(おとし)めて喜びを感じる人たちで、職場では、たとえば下請けのような立場の取引先にムリを押し付け、その従業員たちが困る様子を見て快楽を感じます。
わざと難しい要望を出して、「どうやって返事してくるかな」「○○と言ってきたら、○○と言ってやろうか」などと、身内で話します。
理不尽といえる要求に、相手方が困惑しながらも何とか応えようとし、「ご指定の期日は過ぎてしまいますが、来週中には何とか……」と、申し訳なさそうに話すのを聞いてドーパミンを分泌させるのです。
下請けに嫌がらせをした後には、何十年も一緒に働く同僚が入院して、明日どうなるかわからない状況について、大声で実に楽しそうに話したり……。彼らの日常はそんな調子です。
実際にこうしたシーンを見ると、大げさではなく、地獄という場所には、きっとこんな人たちが住んでいるのだろうと思えてしまいます。
(ちなみに「地獄」というのは、パワハラ被害で困りきった人たちが頻繁に口にするキーワードです。)
■パワハラ行為者はパワハラ以外にも問題が…
相談者のご指摘の通り、彼らがすることには、パワハラだけではなく、良識の欠如が原因と思われる、さまざまな非常識な行為があります。
私がパワハラがあると相談を受けたときには、パワハラだけが問題ですか、他の問題もありますかと尋ねます。「その人の問題はパワハラをすることだけですか」とは、最初に聞くことなのです。
相談を持ち掛けてくださる担当者から聞くだけでは、答えがはっきりしないこともあり、パワハラの被害者以外の従業員たちからも聞き取りをすることがあります。それにより、どんな問題があるかを詳しく把握できるからです。
つまり、私はパワハラ行為者のカウンセラーとしてカウンセリングをしますが、パワハラ行為者のする良からぬ行為が、必ずしもパワハラだけでないことは承知しています。
パワハラ行為者の問題行動がパワハラだけというのは、むしろめずらしいのです。
■パワハラはしないが「良識が欠如している」ケース
一方で、パワハラはしないが「良識が欠如している」というケースも多いものです。
その人たちは周囲に、「性格がわるい」あるいは「変わっている」と認識されています。
彼らも周囲の人を苦しめますが、彼らの振る舞いや言動は、パワハラ行為のように問題として取り上げられにくく、それ故に制限されにくい面があります。
また、同僚にとっては、ただの良識が欠如した人による行いでも、同じことを年下の部下にしたらパワハラになる。そう思える事例も多いものです。
これは私が会社勤務をしていた頃の話です。
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