高知県内の私立高校で「盗撮事件」が発生した。疑いの一部をかけられたのは、当時2年生だった元生徒の男性だ。学校から自主退学するよう言われる「不当な勧告」まであったとして、運営の学校法人を相手取り、約610万円の損害賠償を求める裁判を起こしている。
原告によると、卒業間近に自宅謹慎を命じられて、ほかの生徒と交流することも禁止されたという。また、「盗撮していない」とうったえたにもかかわらず、学校側は対話を拒否したうえ、きちんと調査もしてくれなかったと主張している。(ライター・渋井哲也)
●学校は「男性が見張りをしていた」と考えていることの発端は、校内で起きた「盗撮事件」だ。
訴状などによると、当時野球部に所属していた原告の男性は2022年6月、部活が終わった夕方、同じ野球部のメンバーAとトレーニング室のある倉庫に向かった。
その途中でラグビー部の友人から「いつもラグビー部で"のぞき"をしている場所がある」と聞いた。そこには、女子更衣室とつながる小さなのぞき穴があった。
男性はその日、スマートフォンのカメラを女子更衣室に向けた。数分間にわたって撮影したが、更衣室に女子生徒は誰もいなかった。
いったん倉庫を離れたあと、ラグビー部員Bがトレーニング室から出てきたを見て、「さっきはいなかったのに?」と気になって、再び室内に戻った。
学校側は答弁書で、Bと別の野球部員Cがいるときに、被害者である女子生徒の着替えが盗撮されて、そのとき「男性は見張りをしていた」と主張している。
これについて、男性は「見張りはしていない」と反論。裁判の大きな争点になっている。男性の母親は、筆者の取材に対して、次のように述べた。
「何があったのか、学校がきちんと調べているとは思えません。その場所の壁と天井の隙間から息子が撮影したというのですが、隙間から見ると、(更衣室の)天井しか見えないとのことでした。
しかし、学校の証拠資料では、女子生徒の下半身まで映る角度だったというのです。息子は、そこまで見えることを知りませんでした」
●誰が盗撮した動画なのか「学校は調べていない」学校は、生徒を罰するルールなどを記した「生徒指導基準」の中に「性に関する逸脱行為」も定めている。ただ、盗撮行為について、具体的な基準は書かれていない。
男性は更衣室で盗撮していないものの、カメラを向けた自身の行動を反省して、謝罪文を書いた。
「わかっているのは、被害生徒が着替えていたときに、BさんとCさんの2人が、のぞき場所からカメラを向けていたということだけです。このとき、息子は一緒にいません」(母親)
後日、Cが別のラグビー部員Dと盗撮動画を共有し、Dが部内に拡散させた。この点については、原告・被告とも争いがない。しかし、誰が撮影した動画なのか、学校はきちんと調べ切れていないのだ。
●「盗撮動画」が出回っているという噂に盗撮事件から半年以上経った2023年1月、男性の母親は野球部員Cの保護者から「ラグビー部の盗撮事件に巻き込まれている。男子生徒(男性)も関わっているらしい」という連絡を受けた。当時の担任も、母親に「のぞき行為に関わっているらしい」と電話した。
友人と話しているうちに6月ごろの出来事を思い出した。帰宅後、そのことを母親に話したところ、母親は学校の調査に協力するよう諭した。
「学校に被害申告があり、ラグビー部員が事情を聞かれていました。担任の先生が1月10日に『学校内で女子生徒の盗撮動画が出回っているらしい。知らないか?』などと息子たちに聞いていたらしいです。
翌日、『自分も更衣室がのぞけると聞いて試したことがある』と息子から聞きました。このとき、学校が詳しく調べるだろうと思い、『あなたの知っていることは全部文章に書いて持って行きなさい』と言って書かせて、1月12日に学校に提出させました」
●盗撮動画を拡散した人物はすぐに謹慎が解けた男性は知っていることをルーズリーフのメモにまとめて、担任に渡した。1月14日、学校は男性に「無期限の自宅謹慎」を命じた。その後の学校はどんな対応をしたのか。
「スマホをチェックしたいというので、自宅謹慎中に『学校に持ってきてくれ』と言われました。目の前でスマホの写真をスクロールしていました。数分で終わり、『復元できなくする作業をしたいので1日預からせてほしい』と言われて預けました。
盗撮動画はSNSに拡散はされていないようですが、学校はどこまで拡散されたのかも調べていないようです。ただDさんだけが動画をこっそり持っており、周囲に見せていたようです。この点は、学校側と争いがありませんが、Dさんは短い謹慎のあと学校に戻りました」
1月26日、学校は、男性と母親を応接室に呼び出し、生徒指導の教諭が調査結果を説明した。男性が女子生徒を撮影していないことは確認された。
ところが、その後、校長が応接室に入ってきて、「自主退学をすすめる」と述べ、弁明の機会を与えないまま、応接室から出ていったという。
「教育相談を受けるため、どういうことがあったのかを知っておきたいため、息子が書いたメモを返してもらいたいと言って、表と裏に事情を記したルーズリーフを返してもらいました」
その後、男性の将来のために、高知市の補導センターへ行って、親子で教育相談を受けた。
「当初、警察に相談したいと伝えました。しかし、生徒指導の先生としては『警察はちょっとまずい』と言い、補導センターで相談ができることを教えてもらいました」
●「事実関係をしっかりと把握した適切な処分がおこなわれていない」当時の母親の心境は、「女子生徒を撮っていないが、更衣室にカメラを向けた」という盗撮行為に関心が向いて、学校側に申し訳ないという気持ちだったという。
「申し訳なくて、息子を学校に行かせられないという状態だったんです。指導についてはまだ十分に進んでいない段階でした。もしかすると、学校はその時点で、息子は退学すると思っていたかもしれません。
しかし、学校に対話を拒否されたため、本当のことを教えてほしいという気持ちで、(昨年9月に)裁判まで起こしました。すると、学校は、証拠として、(盗撮動画を)再現した画像を提出してきました。
女の子の下半身まで映る角度です。その画像を見て『なに、これ?』と思ったんです。(息子は)そんなふうに撮れるとは知りませんでした」
白球を追っていた男性は、自主退学勧告後はクラスに復帰できなかったが、退学はまぬがれて、今は大学生になった。裁判を通してこう述べている。
「事件当日のことを今思えば、私には想像力も自律心も足りていませんでした。部屋に人がいたかどうかにかかわらず、決して許される行為ではなかったと思います。本当に反省しています。私が二度と同じ過ちを繰り返さないように、両親は何度も性被害の重大さについて家庭で話をしてくれました。
補導センターでは先生の指導のもと、当時のことを振り返り、自分の行動の何が問題だったのかを改めて考えました。ですが、被害生徒を撮影していないことや動画拡散行為をおこなっていないこと、ラグビー部の生徒による動画拡散行為や過去ののぞき行為などについて調査されていないことも考えると、事実関係をしっかりと把握した適切な処分がおこなわれたとは考えられません」

(出典 news.nicovideo.jp)
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